Office 365 Preview Service Descriptions

現在プレビューである次期Offie365ですが、Technetでサービスディスクリプションが公開されております。 Office 365 Preview Service Descriptions

サービスディスクリプションとはいっても機能一覧のYes/Noをベースとした比較的簡易な物です。今日は、この中からいくつか気になる項目をピックアップしてご紹介します。

Office365 Platform

  • Networking – Allowed IP addresses & IP Protocols [全プランYes]
    • ADFSを利用せずにIPアドレス制限ができるのかと期待したのですが…よくよく説明を読んでみるとOffice 365 URLs and IP address rangesで公開している物のようです。
    • その他、詳細説明部分でIP Protocolの説明の中に、IPv6をオプションでサポートするという話が記載がございました。全機能で利用可能というわけでは無いようですが、今後情報収集したいと思います。
  • Office365 Admin Center – Use Windows PowerShell to manage Office 365 [Small BussinessでNo]
    • Small Businessと同Premiumのみ、Noになっており、注記を見てみると、「接続は可能だが非推奨」になっています。やはりユーザー層を見た場合、コミュニティベースのみサポートということもありPowerShellは難しいだろうという判断になったのでしょうかね。
  • Reports – Create your own reports using Office 365 reporting web services[SmallBusiness以外でYes]
    • Office 365ですが、オンプレミスのソリューションに比べると基本的にレポートが弱いと言われてます。レポートレポーティングWebサービスの詳細がどこにも載っていないのですが、API的に公開されたりするのであれば期待できそうです。

Exchange Online

  • Recipients – Address Book View Customization & Custom Address Lists[全てYes]
    • グループ企業で利用している場合の会社毎のグローバルアドレス帳、ビル毎の会議室一覧などオンプレと比較して利便性の低かった部分が一部解消できそうです。(現時点ではまだコマンドが開放されていないようですが)
  • Sharing and Collaboration – Site Mailbox[全てYes]
    • SharePoint Online(2013ベース)が必要になります。
  • Sharing and Collaboration – Public Folders[全てYes]
    • オンプレのExchangeを利用している場合、既存でパブリックフォルダが多く利用されていることが多いです。現バージョンではこれが利用できませんでしたが、新しいバージョンから利用できるようになるようです。

SharePoint Online

  • content – Site mailbox
    • Exchangeの部分で記載しておりますが、メール(Exchange)と連携したサイトを作成できます。
  • すいません…機能一覧見てもあまり差が分かりませんでした。

Lync Online

  • High Definition Video or Pictures of All Attendee
    • 高画質なんだと思うのですが…こちらの回線環境があまり良くないのかまだ実感できてないです。

今後、色々とマイクロソフトさんからも新機能紹介が出てくると思います。こちらからも、実際に利用できるようになったらどんどん試して紹介していきたいと思います。

Office365におけるPowerShell

この投稿は、PowerShell Advent CalendarならびにOffice365 Advent Calendarに参加しています。

Office365の管理では、色々なところでPowerShellが活躍します。それは、Small Business向けのプランであるOffice 365 プランP1においても同様です。Office365の設定は基本的にコントロールパネル(ブラウザ)から行うか、さもなくばPowerShellから行う形になります。

ただ、ブラウザから設定できることは比較的少なく、かなりの数PowerShellを使わないと設定ができないというケースが発生します。例えば、メール(Exchange)で以下のような設定をするケースの場合です。

  • あるメールアドレスを全社のグローバルアドレス一覧に表示しないようにしたい
  • AD上に無いカスタムの拡張属性を使用して、社員の詳細属性(雇用形態や休職者区分)を設定したい
  • 複数メールアドレスを持ったユーザーの返信において利用するメールアドレスを変更したい
  • 不要なプロトコル(IMAP、POP、MAPI、OWA)を無効化したい
  • OWA上から添付ファイルを開いたりIMを利用したりすることを無効化したい
  • あるメールアドレス(例えば非常勤役員や休職者)に特定の送信者以外からメールを送付できないようにしたい
  • 他のユーザーのメールアドレスでメールが送信できるようにしたい(送信者アクセス権・代理人アクセス権の設定)
  • 頻繁に変わるADの属性を元にした配布グループを作成したい(勤務地が東京本社のグループ、全組合員グループなど)
  • 社用車やプロジェクターなどを施設予約で利用したい(備品用メールボックスの作成・管理)
  • 複数ユーザーで1つのメールボックスを利用したい(共有メールボックスの作成・管理)
  • 出向中など、メールアドレスのみでメールボックスが外部のユーザーを作成したい(メールユーザーの作成・管理)

Exchangeをしっかり活用しようと思うとPowerShellが必要になりますが、小規模なユーザーにPowerShellは少し障壁が高いという話は確かによく耳にします。

ところで、現在カスタマプレビューを行っている次期Office365では、Exchange 2013がベースとなっています。Exchange2010の時と比較して、かなりコントロールパネルから設定可能な項目が増えました。また、現在案が公開されているサービスディスクリプションでは、Small BusinessプランでのPowerShellによるOffice365の管理は「可能だが非推奨」となっています。
無題20121212

実は、上で一覧で書いた項目についてはPowerShellを使用しなくても全てコントロールパネルから設定できるようになりました。(少なくとも、現在のプレビュー時点では)

ただ、これはPowerShellが不要になるという訳では無く、今後も多くの件数を同時に行う場合や定型処理やバッチ的に処理する場合など、PowerShellが活躍することになると思います。

Office365 2012年10大ニュース

この記事はOffice365 Advent Calendarに参加しています。

マイクロソフトのパブリッククラウドサービスであるOffice365がリリースされてから1年半、クラウドサービスの特性上、さまざまな変更や更新などがOffice365においても行われました。

今回は、この1年を軽く振り返って自分的なOffice365の10大ニュースを考えてみました。10位から順に…

第10位 2012年10月期で日本のOffice365 MVPが+2名

まず、軽めのところから。今年の10月期に、中村さんがMVPアワードを受賞させていただきました。公開されている限りで1名だった日本のOffice365 MVPが3名に増えました。

第9位 Office365勉強会開催発足

目代さんなどを中心に、Office365のユーザー同士が情報交換をしあう勉強会が発足し、3回開催されました。今後もこういった活動が活発化していくといいですね。

第1回 Office365 LT大会 第一回 まとめ
第2回 Office365勉強会 ライトニングトーク 第2回 まとめ
第3回 Office365 勉強会 #3 まとめ

第8位 BBCSリリース、BlackBerryからもOffice365が利用可能に

Office365リリースに遅れること半年、BlackBerry Business Cloud Services for Microsoft Office 365がリリースされ、Office365ユーザーは無償でBlackBerryから接続ができるようになりました。

第7位 Office365のID基盤がAzureに

Office365のバックグラウンドで利用されていたID基盤が独立して、Windows Azure Active Directoryとなりました。今後の他システムとのシングルサインオンのみならず、API連携なども期待が持てます。

第6位 ADFS運用開始から1年で証明書トラブル多発

ADFSが運用開始されて1年経過した時点で手動で必要となるトークン署名証明書の更新作業。残念ながら、春~夏頃にかけては公開されている情報も少なく、多くの先行導入ユーザーの環境においてトラブルが発生してしまいました。

第5位 サポート終了情報

早い段階から予告があった通り、IE7がサポート終了しました。また、早くもディレクトリ同期ツールの32bit版の年末でのサポート終了が予定されています。クライアント環境のみならず、連携しているサーバのバージョンアップも今後は必須になっていくということでしょうね。

第4位 各種サービスからOffice365への移行が実施

Office365の前身サービスであるBPOSからの移行に引き続き、Office Live Small Businessからの移行が行われました。特に完全な後継となるサービスではなく、一部機能がなくて利便性に劣る部分があるという話や、独自ドメインサービスがドメインレジストラに移管されたものの、.jpドメインが対応していないなどの話が多数コミュニティに寄せられました。

現在はLive@eduのOffice365(Aプラン)への移行が行われているようです。

第3位 各種バージョンアップ・機能追加や制限緩和

クラウドサービスを利用するメリットでもある、サービスの自動アップグレードです。新機能としてはセルフパスワードリセットやOffice Web Appの機能追加、Exchangeの削除済みアイテム保持期限、24時間の送信アドレス数制限、受信トレイルールのクォータなどが緩和されたり管理者が自身で実施できるようになりました。

また、目に見えるところではありませんが、Exchangeのバージョンアップによって耐障害性が向上するとともにActuveSync/Autodiscoverに完全準拠していないクライアントからの接続性も向上しました。

第2位 次期Office365

早くも次期Office365のプレビューが開始され、来年早々には本格的なバージョンアップが開始される見込みです。ほぼオンプレミスの製品と同時にクラウドサービスとして出してくるという点や、Officeクライアントアプリケーションの次期モデル、クラウド側はそのままにオンプレミス製品のCALのみ価格を上げてきていることを考えると、マイクロソフトが収益モデルの転換を図ろうとしていく点が見えてくる気がします。

第1位 相次ぐOffice365の値下げ

リリースから8か月でOffice365値下げ
⇒ E1で$10(1,000)→$8(800) E3で$24(2,400)→$20(2,000)
値下げから半年後でさらに値下げ(日本リージョン)
⇒ E1で800→660 E3で2,000→1,800

2回目は、米国側の価格はそのままで日本定価の変更(=想定ドル円レートの変更)のみなので、厳密には値下げではないのかもしれませんが、実質的にはこの1年で日本のユーザーは当初と比較してOffice365をかなり安く利用できる状況になったと言えるかと思います。

ただ、Office365のパートナー企業は、サービス価格の何%といったMicrosoftからのインセンティブをベースとするモデルでビジネスを行っている場合もありますので、良いことばかりという訳ではないのですけれどね、、、

来年も次期バージョンへの移行をはじめ、色々なことが出てきそうです。今までのオンプレミスのシステムとは違い強制的にアップグレードされていくので、今後はその追従が重要になっていきます。

特に仕様変更などの場合に、各ユーザーにおいての負担が少しでも軽減できるよう、今後もなるべくタイムリーに新しい情報を調べて公開できるようにしていきたいと思います。

Office 365チームサイト活用ガイドが発売されます

Office365を活用していく上で、一番敷居が高いとよく言われるのはSharePoint Onlineです。かくいう私も、Office365のMVPを頂いておきながら言うのも何なのですが、SharePoint Onlineはほとんど素人に近い状態です。

同時期にOffice365のMVPを受賞されたシンプレッソ・コンサルティングの中村さんがSharePointのスペシャリストなのですが、この度中村さんが私のような初心者向けに「Office 365チームサイト活用ガイド」を出版されました。

これはSharePoint Onlineを使い始められるようになって貰いたいという目的での記載になっており、この本を元に前半部分の操作を実際にやってみることにより、かなりSharePoint Onlineの操作や仕組みに慣れることができるのではと思います。(実際、私も導入したお客様の導入の勉強会の教材として使いたいと感じました)

これからSharePoint Onlineを使い始めたい方やSharePoint Onlineを購入しているがイマイチ使いこなせてない方などに、本当にお勧めの内容です。

どうしてもMicrosoftのプレゼンですと、良いところをできるだけ見せようとしてしまい、様々な機能の紹介に終始してしまいます。この結果、いざ購入して実際に利用しようとしても、そのギャップを埋めることができず、導入の障壁になってしまう事が多いのですが、この辺は流石SharePointのコンサルタントという感じです。

最後に、この本をお勧めする3つの理由を挙げたいと思います。

  1. 機能の紹介はあえて後回しにして、先ずは実際に触って貰う所から入っている(通常だと、1章と2章の順番が逆になる)
  2. テンプレートで作成したページの各機能の紹介の羅列ではなく、空のページを作成して、それに追加する形で実際の環境で利用・運用している中でよく使う機能や操作方法を紹介している
  3. Office365のプランEだけではなく、実装の異なるプランPに対しても対応できる内容になっている

おかげさまで、私もこれでSharePoint Onlineが少しは分かると言えるレベルになりました。

SharePoint OnlineにPowerShellで接続

現在β版の次世代Office365では、遂にSharePoint OnlineにもPowerShellで接続できるようになりました。

今までは、GUIでの操作とAPIからのみという形でしたので、正直100人を越えるような大規模なユーザーですと権限のグループの管理だけでも大変ということで、個人的にとても待ち望んでいた機能です。

こちらを参考に、β版を使用しているテナントにPowerShellからの接続を試してみました。
SharePoint Online Management Shell 環境をセットアップする

まずは、PowerShellモジュールをインストールします。PowerShell 3.0が要求されますが、手元のWindows8環境に入れてみます。
SharePoint Online Management Shell Preview

インストールが終了した後に、「SharePoint Online Management Shell」を起動します。普通のPowerShellなどから起動する場合は手動でImport-Moduleします。(モジュール名、ちょっと長いですが)

Import-Module Microsoft.Online.SharePoint.PowerShell -DisableNameChecking

MOPへの接続は、Connect-MsolServiceで-Credetialのみ指定で自動接続されましたが、SharePoint Onlineの場合は更に接続先のURLも必要なようです。

$LiveCred = Get-Credential
Connect-SPOService -Credential $LiveCred -Url https://contoso-admin.sharepoint.com

おぉ、接続できました。管理用のコマンドもいくつか用意されているようです。http://technet.microsoft.com/ja-jp/library/fp161397.aspx

…ふと、ここでそういえば既に現在のOffice365のテナントはバックグラウンドはSharePoint2013ベースの物にアップグレードされていて、見た目だけSharePoint2010ベースになっているという話を思い出しました。

とすると、ひょっとして既存のOffice365のテナントにつながるのか…

つながった!!

やれると便利だなと思っていたサイトのメンバー管理もやってみると、何の問題も無くできる。


Add-SPOUser -LoginName user@contoso.com -Site https://contoso.sharepoint.com/ -Group "チーム サイト のメンバー"

本番環境が出てから検証しなきゃな…と思っておりましたが…既に使えそうな雰囲気がムンムンします。

その前に Office365 MVPの中村さんの書いたSharePoint Onlineの本を読んで勉強しないと!

2012/11/18 追記

接続できないテナントも有るようです。バージョンアップされていない物も有るということですかね?

2012/11/19 追記

プランPのテナントは、接続先の管理センター自体がなくて接続できないということもかもしれません。

Office365導入トラブルあるある

社内の環境で利用していたシステムを、Office365のようなインターネット上のクラウドサービスに移行すると、事前に検討・準備したつもりでもいざ導入となった時に色々と検討漏れが出てきてしまうことがあります。

単純に設定変更や運用回避などができる物であれば問題ないですが、例えば会社のセキュリティポリシーの変更やパソコンの入れ替え、VPNサービスの更改などが必要な場合、導入スケジュールに大きな影響を与えてしまうことがあります。

ここでは、メモ書き程度にOffice365の導入トラブルのあるあるを記載させて貰います。

【クライアント編】

①クライアントPCが要件を満たさない

  • 社内システムの要件でIE6をUpdateできない
  • 空き容量が少なくて更新プログラムを適用できない

②既存で利用しているメーラーが対応していない

  • Outlook2003を利用している
  • 標準メーラーがPOP3S,IMAP4S,SMTP(TLS)に対応してない

③ユーザーがクライアントPCの管理者権限持っていない

  • サインインアシスタントなどがインストールができない

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Server CoreモードでのFirewallの無効化

Windows Server 2012は、デフォルトでインストールするとGUI無しのサーバコアモードでインストールされます。

テストやインストールのためにWindows Firewallを無効化することがたまにあるかと思うのですが、その際にGUIから無効化することはできないのでコマンドラインからの無効化の方法を紹介します。

コマンドプロンプト
C:>netsh advfirewall set allprofiles state off

もしくは、せっかくWindows Server2012からPowerShellで色々とできるようになったので、慣れておいたほうが良いかもしれません。

PowerShell
PS C:>Get-NetFirewallProfile | Set-NetFirewallProfile -Enabled false

戻すときは、逆にstate onか-Enabled trueです。一度覚えてしまえば簡単ですね。

Update-Help実行時のエラー

PowerShellのヘルプは、Update可能なヘルプとして構成されており、Update-Helpコマンドでオンラインで更新をすることができます。

ただ、現在Windows Server 2012のRTM版で、Update-Helpコマンドを実行すると、一部のモジュールが含まれる場合に以下のようなエラーが出ることがあります。

Update-Help : UI カルチャ {ja-JP} を使用してモジュール ‘NetWNV, RemoteDesktop’ のヘルプを更新できませんでした: モジュール マニフェストの HelpInfoUri キーの値は、ヘルプ ファイルが格納されている Web サイト上のコンテナーまたはルート URL に解決される必要があります。HelpInfoUri ‘http://technet.microsoft.com/library/cc732148.aspx’ はコンテナーに解決されません。

これは、ヘルプのオンライン更新先で定義されている先のURL(HelpInfoUri)がまだ利用可能になっていないために発生するエラーです。

参照先は、各モジュールのマニュフェスト内で定義されています。例えば、上でエラーが出ているRemoteDesktopでは、 C:WindowsSystem32WindowsPowerShellv1.0ModulesRemoteDesktopRemoteDesktop.psd1 にて以下のように定義されています。

# HelpInfo URI of this module
HelpInfoURI = 'http://go.microsoft.com/fwlink/?LinkId=225876'

ためしに表示されているhttp://go.microsoft.com/fwlink/?LinkId=225876にアクセスをしようとすると、http://technet.microsoft.com/library/cc732148.aspx にリダイレクトされ、「アクセスしようとしているドキュメントはまだご利用いただけません。」と表示されます。

現時点ではマイクロソフト側での公開が開始されるのを待つしかない状態かと思います。どうしてもエラーメッセージが出るのが気になる方は-Moduleオプションを利用して、個別にその他のモジュールのみヘルプをUpdateするという形になるかと思います。

例)
PS C:> Update-Help -Module ServerManager

Office 365 Advent Calendar 2012やります

Advent Calendarとは、12月1日からクリスマスまでの間、参加者が日替わりで記事を書く年末恒例のイベントです。今年は、テーマ「Office 365」で実施したいと思います。

内容については特に制限は設けませんので、Office 365に関する事でしたら技術的なことでも、導入の体験談や関連ソフトの紹介などでも、何でも構いません。

Office 365 Advent Calendar 2012

誰も参加者がいないと、1人で25日間連続でblogを書かないといけないという悲惨な事態に陥ってしまうので、軽いノリで是非参加頂ければと思います。

エンジニアから見たMTAとしてのExchange

Office365を導入する目的として最も多い要因は、メールシステムの更改かと思います。

各種ドキュメント、書籍や事例などによってかなり多くの情報が得られるようになってきましたが、Office365のExchange Onlineのベースとしているソフトウェア「Exchange Server」は、インターネット上で利用されてきているSendmailやPostfixなどのMTA(メール転送エージェント)と比較して、特徴的な実装となっているところがあります。

ここでは、Office365を導入する前に有益な情報となるよう、一般的なメールシステムと比較してのExchangeの特徴についていくつか記載をさせて頂きたいと思います。

①From詐称ができない

  • Exchangeでは、各ユーザーは標準で「自身のプライマリアドレスでメールを送信する権限」を有しています
  • 1つのユーザーに対しては、1つの「プライマリメールアドレス」と複数の「セカンダリメールアドレス」を割り当て、メールを受信することができます
  • この為、他のユーザーや配布グループなどのアドレスをFromアドレスとしてメールを送信しようとすると、「権限がない」と弾かれます
  • 送信者アクセス権(SendAs)という権限を割り当てる事により、Fromアドレスを変更してメールが送信できます。(内部では、そのFromのアドレスのメールボックス経由でメールが送信されるように処理がされます。)
  • SendAsは、SMTPプロトコルを使ってメールを送信する場合には利用できません。

②MessageIDが重複するメールは1通しかメールボックスに届かない

  • Exchangeでは、短時間(1時間以内)に同一MessageIDであるメールが同じメールボックスに到着した場合、後から到着したメールを重複として破棄します。
  • これにより、Toを本人としCcをメーリングリストとして送信されたメールは、Toで直接配送されてきたメールのみ受信され、Ccで展開された後のメールは受信されません。
  • メーリングリストでSubjectに通番を付けているような場合、その番号のメールのみ欠落して見えるなどの症状となります。

③メールアドレスの表示名がサーバ側で自動的に書き換えられる

  • Exchangeでは、FromやToなどの欄に表示される名前をグローバルアドレス帳の情報によって解決します。
  • この為、従来は自身でアドレス帳登録した名前、”舞黒 部長”<maikuro@contoso.com>などを宛先として送付できたのが、自動的に舞黒太郎<maikuro@contoso.com>などの全社的なグローバルアドレス帳に登録されている名前(通常、フルネームをベースとしている値)に自動的に書き換えられて送信されます。
  • デフォルトの設定だと、日本語の表記のまま海外のユーザーにも配送されてしまいます。特定ドメイン、もしくは全体に対して明示的に表示名をアルファベット表記に変更できます。変更方法はこちら
  • この処理は、SMTPプロトコルを使ってメールを送信する場合には該当しません。

④MIMEエンコードはExchange外部に出る際に実施される

  • Exchange内部では、SMTPで通常利用されるエンコードではなく独自の形式でメールが送受信されます。
  • SMTP送信時に必要となるMIMEエンコードなどはクライアントでは必要なく、OutlookやOWAはエンコード処理を行いません。
  • エンコードのオーバーヘッド(約3-40%)が必要無い分、SMTPよりネットワークトラフィックは軽くなります。
  • Office365は25MBのメールサイズが上限ですが、これはエンコード前の値を仕様として表記した物であり、内部では35MBの容量が設定されています。この為、30MBの添付ファイルはOutlookでは送信できるが、Thunderbirdでは送信できないという事象が発生します。(勿論、外部に送信する際にはエンコードされるので35MBの上限値に引っかかりますが)
  • MIMEエンコードされるのは、Exchangeから外部に送信される際に相手先のサーバを自動判定してエンコードが実施されます。
  • 外部サーバがExchangeと判定された場合、TNEF形式でメールがエンコードされます。外部連絡先に登録したユーザーにwinmail.datの添付ファイルだけ付いた空メールが届くという事象のはこの自動判定に起因する物です。
  • この処理は、SMTPプロトコルを使ってメールを送信する場合には該当しません。

⑤Exchange内部ではMXレコードを参照せずに配信する

  • Exchange内部では、他のMTAで権限のあるドメイン(MyDestination)と設定した場合と同様、内部ドメインはDNSを参照しません。
  • DNSの代わりに、ActiveDirectoryの中のProxyAddressesの値(プライマリメールアドレス、セカンダリメールアドレス)で一致する物を検索し、有った場合はそのユーザーのメールボックスへの配送を行います。
  • 内部ドメインであるが、そのアドレスがADに無かった場合の挙動は、そのドメインの種別によって異なります
    • 「ホスト」 宛先不明としてメールを破棄し、配送不能メール(NDR)を送信元に送ります
    • 「中継」 FOPEからMXレコードを参照して外部に配送します

⑥キャッチオールアドレスは作成できない

  • 存在しない宛先宛てのメールを全て特定の受信者(例えば管理者)に送信することはできません。
  • オンプレミスのExchange 2010 Serverであれば、キャッチオールメールボックスという物を作成することによって近い機能を実装できますが、Office365では提供されていません。

⑦配布グループは通常メール以外は受け取れない

  • 配布グループは仕様上通常配送のメールのみ受け取ることができ、NDRなどは展開することができません。
  • この為、配布グループ宛に送信したメールが展開された後に、例えばメンバーの退職、メールボックス溢れなどが有った場合のエラーメールなどは「破棄する」「配布グループの代表所有者に返信」「送信元に返信」の3つの処理しかできず、通常のメーリングリストなどで良く見られる「管理者グループ宛に返信する」という形式は利用できません。(管理者グループを作成したとしても、エラーメールを展開できないからです)

⑧メール以外の情報もメールボックスに格納されている

  • 例えば、主要な機能である予定表、タスク、個人の連絡先などはメールボックスの中の特殊フォルダとして管理されています。
  • その他、受信トレイルールや宛先情報のキャッシュなど、細かい設定情報などもメールボックス上に存在します。
  • これらの情報は、通常のPOP/IMAPなどのクライアントからはアクセスできない為、それらのクライアントでは機能自体を利用する事ができません。
  • 「迷惑メール」フォルダに関しては通常メールボックスとしてIMAPからアクセスできますが、POPは受信トレイにしかアクセスできません。この為、POPを常用する場合は定期的にOWAでアクセスして、迷惑メールフォルダの内容を確認(間違えてspamと判定されている物は無いかなど)するという運用が必要になります。

⑨メール送信処理はサーバー(メールボックス)で実施され、送信履歴も残る

  • メールをクライアントが送信しようとした場合、その処理は直接送信ではなく「送信フォルダに送信したいメッセージを作成する」という処理になります。
  • サーバ側では、定期的に各送信フォルダからメールをピックアップし、送信処理を行います。送信が完了すると、そのアイテムを送信済みフォルダに移動します。
  • この為、Exchangeでは受信メールだけではなく、受信メールに関しても全てExchangeサーバ側で保管されています。この仕組みをベースとして訴訟ホールドなどの機能で監査対応などを実施します。
  • この処理は、SMTPプロトコルを使ってメールを送信する場合には該当しません。この為、Outlook/OWA以外を利用する場合、一部(内→外)のメールの監査ができない可能性がございます。

⑩送ったメールのリボーク(取り消し)ができる

  • 送信済みメールを取り消したり置き換えたりすることができます。
  • 例えば、送り先を間違えた場合や添付ファイルを忘れた場合など、あわてずにOutlookクライアントから送信済みアイテムを開き、「メッセージの取り消し」を行うと、自動的にアイテムを削除したり置き換えたりしてくれます。
  • 相手先が未開封(もしくはPOPなどの場合は未ダウンロード)だった場合に限ります。

いかがでしたでしょうか?

知らない機能であったり、移行してみて少し挙動が変だなと思うことがあるような要因になるようなものを集めてみましたが、他にも「こんな事あるよ」とか「こうなってるのはどうなの?」とか有りましたら教えて頂けると幸いです。