Exchangeのプラン2では、長期間に渡るメールの監査・アーカイブへの対応を実施することが可能となっております。これは、「各ユーザのメールボックスの無制限のアーカイブ+削除/変更したアイテムの保全+監査ログ」という要素によって構成されており、情報の分散管理(各ユーザーのメールボックス)とその横断検索がキーとなっています。
ここで1点問題になってくるのが、退職者に関する処理です。ディレクトリ同期下において、退職したからと言ってローカルのAD上でアカウントを削除してしまうと、削除した情報がそのままクラウド側に同期され、ユーザが削除され、メールボックスが一定期間(30日)後にサーバ上から削除されます。
こうしてしまうと、退職前に何か仕掛けてから辞めていった人に対しての、さかのぼっての監査が実施できなくなってしまいます。とはいえ、永久的にメールボックスを残すということは、辞めた人の分も合わせてID単位の課金を続けなくてはいけなくなり、どんどん必要なサブスクリプションを追加していかなくてはならず、非現実的です。
退職者の情報は、ネットワーク管理者が必要な分のみ.PSTファイルに落として一定期間ローカル保存しておくという運用が一般的ですが、横断検索が出来なく無くなるなどの不便が生じますので、一定期間Office365にアカウントを残すという運用を考えます。
- 当該ユーザーのログオンを不可にする
- 当該ユーザーへのメールの配送を止める
- 配布グループから抜いたり、グローバルアドレス一覧の非表示化などの後処理
などが考えられますが、1.に関してはローカルのADでアカウントを無効化すれば、Office365へのアクセスも不可になります。(サブスクリプションは解放されないですし、普通にメールも配送され続けますが)
2.はExchange Online側のアクセス権で普段はメールを送ることが無い管理用アカウントなどだけからのメールを受け取るようにSet-Mailboxコマンドレットで-AcceptMessagesOnlyFromを指定しておくのが楽だと思います。PowerShellからの設定になりますので、Exchange Onlineに接続してから実行します。
3.については、Office365のExchange Onlineサービス説明によりますと、
管理者は、社内の Active Directory でオブジェクトに HideInAddressList 属性を設定して (ディレクトリ同期ツールを使用している場合)、またはリモートPowerShell を使用して、ユーザー、配布グループ、および連絡先をグローバル アドレス一覧で非表示にすることができます。
とあるので、2.でSet-Mailboxコマンドを実行するついでに実施してしまおうと思います。
おろ、ディレクトリ同期環境下ではローカルのみですか…困りましたねぇ。そう、勘の良い人ならお気づきだと思いますが、GALの表示を制御するmsExchHideFromAddressLists属性は、Exchangeをインストールする際のスキーマ拡張で実装される物で、オンプレミスでExchangeがないユーザの環境では設定自体ができません。もちろん、マニュアルに誤記されているHideInAddressListなんてのも有りません。
さて、考えられるのは2つ。ディレクトリ同期(ILM)をいじって、どこか使ってない属性からマッピングしてくるか、スキーマを拡張するかです。ホントは前者で行きたいですが、このmsExchHideFromAddressLists属性はBoolean(TRUEかFALSEを保持する)形式なので、対応した良さそうな物が見つかりませんでした。ということで、不本意ながらExchange2010SP1の評価版をサイトからダウンロードして、中身は使わずセットアップの準備コマンドだけを利用します。
今回はスキーマ拡張だけを行いますので、setup.com /PrepareSchemaを実行します。
完了すると、無事msExchHideFromAddressLists属性が設定できるようになります。Set-ADUserコマンドの場合、拡張属性なので以下のような感じでしょうか
Set-ADUser -replace @{msExchHideFromAddressLists=$True}
う~ん、高々アカウント削除だけの話なんですが、面倒ですね。
ジャーナルアーカイブがOffice365の中で使えればこんなこと考えなくても良いのでしょうけど。(今は他のEnterpriseVaultとかのアーカイブに飛ばして格納しないといけないので、NW帯域考えると現実的では無いですよねぇ…)