DuplicateDeliverによる配信不可

Exchange Serverでは、以前のバージョンより同じメールが複数届いた場合に最初の1通のみ受信し、残りのメールを重複として削除するシングルインスタンス機能が備わっています。Exchange Server 2013においても同機能が備わっております。

重複と検出判断されたメールは、メッセージ追跡ログを見ると、2通目以降のメールには Source STOREDRIVER EventId DUPLICATEDELIVER が記録され、メールボックスには最初の1通だけ配送されます。
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、同一のメッセージと見なされる条件は以下の通りです。

  • 同一のMessageIDヘッダであること
  • 同一のDateヘッダであること
  • 同一のメールボックスへの配送であること

参照:How does duplicate detection work? / Exchange 2007 で重複するメッセージを検出する方法

この機能自体は、ユーザー側のメールを読む負荷を軽減すると共に、メールのループ防止などの意味で重要な役割を担っているのですが、一定のケースで2通目以降のメールを受け取りたい場合があります。例えば、

  1. ウィルスが誤検知されて添付ファイルが削除されたメールをアンチウィルスソフトから再送する場合
  2. ユーザが誤って削除して復元できなくなったメールをジャーナルアーカイブから再送する場合
  3. システム上の制約で同じMessageIDで送信してくるメールを受信する場合
  4. Toに自身のアドレスが、Ccにメーリングリストが入っていて、メーリングリスト毎にフォルダ分けしている場合

などです。Exchange Server 2007/2010では、デフォルトで1時間の間このメッセージの重複を検知します。また、情報自体は7日間保存しております。この時間を変更する際には、レジストリの HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\MSExchangeIS\<Server_Name>\Private-<GUID>\ 配下のDeliveredTo Expiration in Hours や DeliveredTo Cleanup Interval in Seconds を変更する事により変更することが可能でした。

ところが、Exchange Server 2013においては、検証する限りでこの設定が変更になっているようで、今までデフォルトでは1時間待てば配送されていた物が、7日間配送されないようになっておりました。また、今まで設定していたレジストリを設定してみても動作は変わりません

Microsoftのサポートに問い合わせて調査したところ、Exchange Server 2013 CU7現在、上記設定は7日にハードコーディングされており変更できなくなっているとのことでした。

Exchange Serverは、基本的にExchange Onlineと同じコードがベースになっているという話を聞いたことがあるので、Online側でカスタマイズ不可としてハードコーディングされているのであれば、それも考えられるかなとは思う反面、今までとデフォルト値を変更した上に設定変更も不可…というのはちょっと厳しいかなとも感じております。

最近、Exchange Onlineの挙動を見る限りでは、重複検出期間が24時間に仕様が変更になったっぽいので、オンプレも今後のCU8やそれ以降で挙動が変更にならないかどうか注視していきたいと思います。

関連記事: 重複メッセージの除去(Exchange Online)

メールヘッダでExchange Onlineの構成を推測

注:この投稿は検証結果を元にした推測の部分を多大に含みます 今回は、Exchange Onlineのサーバ構成について考えてみたいと思います。

メールのヘッダには、様々な情報が付与されています。これを読み解くことによって、メールの送信遅延がどこで発生しているのか、どういうサーバを経由して届いたのかを調べることができます。

例えば、以前の記事 重複メッセージの除去(Exchange Online) で送信したテストメールを見ると、以下の様なReceivedヘッダが付与されています。

Received: from SG2PR03MB0537.apcprd03.prod.outlook.com (25.160.235.149) by
 SIXPR03MB0541.apcprd03.prod.outlook.com (25.160.173.25) with Microsoft SMTP
 Server (TLS) id 15.1.99.14 via Mailbox Transport; Sun, 8 Mar 2015 13:39:47
 +0000

Received: from SIXPR03CA012.apcprd03.prod.outlook.com (10.141.119.22) by
 SG2PR03MB0537.apcprd03.prod.outlook.com (25.160.235.149) with Microsoft SMTP
 Server (TLS) id 15.1.106.15; Sun, 8 Mar 2015 13:39:46 +0000

Received: from DB3FFO11FD006.protection.gbl (2a01:111:f400:7e04::167) by
 SIXPR03CA012.outlook.office365.com (2a01:111:e400:a82b::22) with Microsoft
 SMTP Server (TLS) id 15.1.106.15 via Frontend Transport; Sun, 8 Mar 2015
 13:39:46 +0000

Received: from xxxx.localdomain (xx.xx.xx.xx) by
 DB3FFO11FD006.mail.protection.outlook.com (10.47.216.95) with Microsoft SMTP
 Server id 15.1.112.13 via Frontend Transport; Sun, 8 Mar 2015 13:39:43 +0000

Receivedヘッダは、リレーされる度に下から上にだんだんと追加されていきます。Office 365の中では、主に以下の様な流れで記録されています。
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まず、①では外部からMXレコードを引いた値でEOPに送信されます。これは、APACには限定されず、世界中のEOPで受信する形になるようです。今回はDB3~というホスト名で受信していますので、恐らくヨーロッパリージョンのダブリンのEOPで受け取ってからAPACに転送されているのだと思います。

Exchangeでは、外部からのメールはCAS(クライアントアクセスサーバ)で動作しているフロントエンドトランスポートが受ける形になります。直近数百通のメールを見る限りで、後述するDAGより大きな単位で束ねられたシンガポール・香港のCASサーバ群に負荷分散されて到着しているようです。ここはロードバランサーにより行われていると推測します。

次に、メールボックスの存在するDAG(データベース可用性グループ)に対してルーティングされます。DAGは、Exchange Server 2013と基本的なアーキテクチャが同じという前提であれば、最大16台のメールボックスサーバで構成されるクラスタサーバ群になります。同じく直近のメールのヘッダを追う限りでは香港①/香港②/シンガポール①/シンガポール②でそれぞれ4台ずつ構成されている様です。

最後にメールボックストランスポートから実際のメールボックスに対してメールが配信されます。メールボックスデータベースは、1つのActiveと複数のPassiveによって構成されていますが、メールボックストランスポートからは現在Activeとなっているメールボックスサーバにメールが配送されます。

これらをまとめると、以下の様なメールフローになります。CASのサーバ名は非常に数が多かったのでサンプルを、メールボックスサーバの中で実際に見つからなかったが、名前付けルールから推測したものを( )で表示しています。(※たまたま通らなかっただけかもしれませんし、故障やメンテナンスで切り離されていたのかもしれません。)
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次に、 重複メッセージの除去(Exchange Online) で紹介している過去一定期間に受信したメールの重複チェック用のデータですが、これは各メールボックスストアごとに保存されており、メンテナンスや故障対応などのためにデータベースのActiveが別のサーバに切り替わるとリセットされます。

以下、3/4以降のメールについて、最後のReceivedヘッダの記録されているサーバ(つまり、メールボックスのストアされているサーバ)と時刻のリストです。24時間ではない間隔で来ているメールはそれぞれ短時間(数十分)の間SG2~→SIX~に切り替わり、切り戻りが発生しており、メンテナンスで同一データセンター内でActiveが切り替わったと推測されます。

  • Mar 4 16:07:39 JST 2015: SG2PR03MB0539.apcprd03.prod.outlook.com
  • Mar 5 16:08:08 JST 2015: SG2PR03MB0539.apcprd03.prod.outlook.com
  • Mar 6 16:08:36 JST 2015: SG2PR03MB0539.apcprd03.prod.outlook.com
  • Mar 7 01:23:47 JST 2015: SIXPR03MB0541.apcprd03.prod.outlook.com
  • Mar 7 01:58:48 JST 2015: SG2PR03MB0539.apcprd03.prod.outlook.com
  • Mar 8 01:54:17 JST 2015: SG2PR03MB0539.apcprd03.prod.outlook.com
  • Mar 8 22:39:42 JST 2015: SIXPR03MB0541.apcprd03.prod.outlook.com
  • Mar 8 22:54:42 JST 2015: SG2PR03MB0539.apcprd03.prod.outlook.com

Activeが切り替わった場合でも、OutlookからExchange Onlineへの接続は透過的に行われていますので、ユーザーが気づくことは少ないかと思われます。

サイト障害を考えると、シンガポール、香港ともに2つずつはメールボックスDBを配置するのが必要だと思いますので、HK2~、HKX~のどれかにもPassiveが存在しており、最低、平常時は1 Active – 3 Passive以上の冗長性は確保されているものと思われます。更に運用によって(すぐにオンラインに戻す必要はないと前提で運用設計する場合)はDC内に2つ以上のPassiveを構成している可能性もありますね。

 

また、これらのユーザーの所属するサーバ群はたまに変わるようです。 (私のメールボックスは、2/6のAM6:00-7:00頃に HK2PR03MB0833 から切り替わっています。)

これは、オンプレミスで利用するのと同じで、それぞれのユーザーの利用量や負荷についてはバラツキがあり、これを解消する為のリバランス処理や障害対応(主に、検索インデックス関係)が多いと思われます。

Outlookを便利にするアドイン紹介③

今回は、利用者側が便利、というよりは管理者よりの便利機能になりますが、誤送信対策を提供するアドインの紹介です。

そもそも、Exchange/Outlookは標準で誤送信対策に役立つ機能がいくつか備わってますが、それでは万全ではないと考える組織向けになります。欧米では免責事項を文末に付けておけば十分とされている部分も多大にありますが、日本は少し厳しめですね。

Office 365 に標準装備されている電子メールの誤送信防止機能 5 点 

いくつか出てますが、今回は試用版がVectorからダウンロードできるWISE Alertを紹介します。

インストール自体は、インストーラーを実行すると簡単に完了します。
スクリーンショット (161) スクリーンショット (162) スクリーンショット (163) スクリーンショット (164) スクリーンショット (165)

 

なお、Chromeからダウンロードしようとすると警告メッセージがでてしまうので、IEからダウンロードした方が良いかもしれません。
スクリーンショット (166)

 

Wise Alertの基本機能は、①メール送信時の確認画面のポップアップ ②自動メール遅延送信の2つです。メールを送信すると、自分が送信しようとしたメールの宛先や添付ファイルに誤りが無いかどうかを確認する画面がポップアップします。
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この画面の表示条件は設定により変更することができます。添付ファイルが有る場合、外部ユーザーが存在する場合など、比較的よく利用するパターンで条件付けをすることが可能です。
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デフォルトでは10分の送信待ち時間が設定されていますが、その場合10分間はOutlookの「送信トレイ」に残っている状態になりますので、そこから削除や編集などをして取り消しすることができます。
スクリーンショット (168)

 

他にも、有名どころではCipher Craft/Mail(Outlookアドインタイプ) などがありますが、企業情報を登録しないと試用版をお出しできないということで、こちらはまた機会があれば紹介させて頂きます。

 

Outlookを便利にするアドイン紹介②

前回の投稿に引き続き、Outlookを便利にするアドインを紹介させて頂きます。

Exchange Onlineは、マルチドメイン/マルチアドレスに対応しており、一人で複数のサブアドレスを持つことができます。ただし、これらは基本的に受信専用のアドレスであり、送信時に利用されるのはプライマリアドレスと呼ばれる代表アドレスのみになります。

これらを回避するため、配布グループや共有メールボックスなどを作成し、送信者アクセス権を割り当てることにより任意のアドレスから送信できるよう運用対処することがあるのですが、…正直面倒ですよね。

という訳で、それを解消するのがこのProxy Managerです。$29.99と有償の英語のソフトウェアですが直感的なインターフェイスですので恐らく誰でも利用できると思います。インストールはダウンロードしてきた.msiファイルを実行するのみで完了します。
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インストール完了後にOutlookwp起動すると、 [Send Using Proxy Addresses]というプルダウンメニューが表示され、サブアドレス含めたアドレス一覧が表示されますので、ここで送信元として利用したいアドレスを選択します。
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初回のみID/PASSを設定する画面が表示されますので、こちらにOffice365のID/PASSを入力します。また、Emailアドレスの前の表示名も変更したい場合はこちらの画面で[Names]を変更します。
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到着したメールは、以下の様に送信者の部分に先ほどの電子メールアドレスと表示名が記載されています。また、購入前の場合はフッタに購入情報が記載されます。表示や操作について問題無いと確認してから、購入すれば良いと思います。
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購入はメールのリンクから実施します。ライセンスキーが発行されたら、[Proxy Manager Options]の左下の[Register]ボタンから入力して完了です。
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複数のユーザーやプロダクトを兼任している窓口業務などの返信用にお勧めいたします。

 

Outlookを便利にするアドイン紹介①

Office365を利用する場合、メールクライアントはOutlookを利用されることが多いと思います。今回は、私が今利用させて頂いている便利なOutlook2013用のアドインを2つ紹介させて頂きます。

まずは、Office365勉強会で紹介を頂いたのですが、二宮さんの作成されたOutlook添付ファイルツールです。

仕事柄、スクリーンショットやログを取得して、それを添付ファイルとして送信する事が多いのですが、そのたびにペイントやメモ帳を開いて、クリップボードから貼り付けて、名前を付けて保存して、パスワード付きZIPにして送付とかしていたのですが、この作業をOutlookのウィンドウを閉じることなくその上でやってしまおうというのがこのツールです。

インストールすると、メールの作成画面の中に添付ツールのタブが現れます。
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ここで、[保存]をクリックすると、ファイル名を入力するとクリップボード上の情報がファイルとして保存されます。クリップボード上の情報のタイプによって、ファイルフォーマットは.txtや.pngと自動で識別されます。芸が細かい!
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[圧縮して追加]とすると、名前を付けたファイルをそのままZIP化した物を追加してくれます。パスワード無しで送る場合などはこれでそのまま送ってしまえば良いですね。
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[添付を圧縮]で、複数の添付ファイルを圧縮したり、パスワード付きZIPにしたりできます。[パスワードメール作成]をクリックすると、先ほどの画面で入力したファイル名とパスワードを引用してそのままパスワード通知用のメールを生成してくれます。
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取得した情報を送るまでの一連の流れを、Outlookのメール作成画面の中で完結できるのでとても作業効率が向上しますね。皆さんも是非お試し下さい。

Outlook添付ファイルツール – Vector